進学や就職、異動などで新生活の準備を始める2月。特に、春から一人暮らしをするお子さんがいるご家庭では、「いろいろと準備しなくちゃ!」と考えている親御さんも多いのではないでしょうか。
一人暮らしをするということは、食事の面倒も自分でみなければならないということ。
健康面だけでなく、節約のためにも自炊を始めるときに必要になるのが、調理器具です。
そこで今回は、調理器具の中でも“包丁”について、東京・台東区の合羽橋(かっぱばし)にお店を構え、プロ用から家庭用まで1,500種類以上の包丁を取り揃える「つば屋包丁店」さんに、一人暮らしをはじめる方へおすすめしたい包丁についてお聞きしました。
巣立っていくお子さんへの贈り物に、ぜひ検討してみてください。
初心者がまず持つべき基本の包丁は「三徳包丁」と「ペティナイフ」の2本!
ひとくちに包丁といっても、実にさまざまな種類があります。その中でも、料理をするうえで揃えておきたいのが、汎用性の高い「三徳包丁」と「ペティナイフ」です。
三徳包丁の「三徳」とは、「肉」や「魚」、「野菜」の3つの用途という意味から来ており、さまざまな食材を切れるという意味。料理を始めるにあたってぜひ持っておきたい基本の包丁です。
ペティナイフは、果物の皮をむく、ジャガイモの芽を取るほか、飾り切りを行う際にも活躍する小型の包丁。三徳包丁のサポートとしてペティナイフを1本持っておけば、ちょっとしたものを切るときや、細かい作業にも対応できて便利です。
「料理をもっと楽しみたい!」という思いから、かたまりの肉も切れる「牛刀」や魚をさばくのに便利な「出刃包丁」を購入する方もいますが、まずはこの三徳包丁とペティナイフの2本があれば、大抵の料理には対応できるので安心ですよ。
[選ぶポイント1]刃の材質
では、包丁を選ぶときに重視したいポイントをご紹介しましょう。まずひとつめは、刃の材質。一般的に包丁はステンレス製と、鋼製といった種類がありますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
ステンレス製の包丁のメリットは、なんといっても錆びにくい点。サビは包丁の切れ味そのものを悪くするため、「なんだか切りにくい」と感じた人はムダな力を入れて包丁を使うようになり、その結果、包丁でうっかりケガをしてしまった……ということがよくあります。
また、研ぎやすく、お手入れが簡単という点もステンレスの大きな特徴です。取り扱いやすさを重視するのであれば、ステンレス製のものがおすすめです。
一方、切れ味は鋼製の包丁が優れています。ステンレスに比べて錆びやすいというデメリットはありますが、お手入れを入念に行える方ならば、切れ味の良い鋼製を選ぶとよいでしょう。
[選ぶポイント2]持ち手(柄)
さらに包丁を選ぶときに注目したいのは、持ち手(柄)部分。包丁の持ち手は、大きく分けて木製と、金属の2種類があります。
刃と持ち手部分が一体になっているステンレス製の包丁は、つなぎ目がないため、洗いやすく衛生的です。耐久性もあり、長く使える一方で、持ち手が滑りやすいため、気になる方がいるかもしれません。
一方、持ち手が木製の包丁は、つなぎ目(柄元)部分までしっかりと洗う必要がありますが、使っているうちに手に自然と馴染んでいく特徴もあります。使えば使うほどに愛着がわいてくるのは、持ち手が木製の包丁の大きな魅力ともいえるでしょう。
このようなメリット・デメリットを踏まえて、お手入れをこまめに丁寧に行える方なのか、あるいは少し大雑把な性格で細かいお手入れは苦手か、使う人の性格なども考慮して、その方に適したものを選んでみてください。
良いものを長く使いたい。普段から気をつけたい、包丁の使い方とお手入れ方法
日々包丁を使用していれば、切れ味が落ちてしまう事態は避けられません。そんなときは、砥石を使って研ぐと、切れ味を取り戻すことができます。
また、使用後に洗った包丁をしっかりと拭かないままにしておくと、知らず知らずのうちにサビが生じてしまう場合もあります。サビは切れ味を悪くするだけでなく、衛生面においても放っておけない問題です。
サビを取るには、サビ取り用の砂消しゴムを使えば、簡単にサビを落とすことができます。ホームセンターや大型の雑貨店で販売されているので、もしもの場合に備えて購入しておくと安心ですね。
こうしたお手入れ方法を知っておくことももちろん必要ですが、包丁を長く使う上で大切なのは使い方と日々のお手入れです。ではなぜ包丁は切れなくなるのか、その原因を探ってみましょう。
何気ない行為が包丁の刃を痛める原因に
包丁の刃を痛める原因のひとつは、固いものを切ること。冷凍された肉を切ろうとして、ついつい包丁に体重をかけてしまっている方は多いと思います。しかしこのような使い方は、刃に大きな負担をかけてしまい、少しずつ刃を痛めてしまいます。冷凍されたものは、無理なく切れる程度に解凍されるまで待ってから切るようにしましょう。
また、かぼちゃなどの固い野菜などを切る際も、必要以上に力を入れないようにしてください。しっかりと刃を研いでおけば、無駄な力を使うことなく切れるはずです。切れ味が悪いと感じたら、砥石を使って刃を研いでから料理をしましょう。
また、「まな板でみじん切りにした野菜をボウルやフライパンに移すために、包丁で寄せる」という行為も実はNG。何気なくやってしまう動作ですが、まな板との摩擦によって刃が痛むため、寄せる場合は刃のない後ろ側(峰)を利用するなど、できるだけ刃をこすらないようにしましょう。
「包丁を直火で炙るとよく切れる」は間違い!
さらに注意したいのは、「包丁を直火で炙ること」。やわらかいパンやケーキを切る際、コンロの火で包丁を軽く炙ると綺麗に切れると言われていますが、これは大きな誤解です。包丁の刃に火を直接当てると、切れ味が落ちてしまいます。
ただし「温める」と切れやすくなるのは本当です。パンやケーキを切るときは、包丁の刃を人肌ほどの蒸しタオルやお湯であたためてみてください。
使い終わったらさっと片付ける!
料理を終えた後は、包丁をさっと洗い流し、清潔な布巾で拭いて包丁差しに入れて保管することを心がけましょう。あと片付けが面倒なあまり、お皿やボウルと一緒にシンクに置きっぱなしにしてしまうと、お皿の下敷きになってしまったり、片付けようとした際にうっかり指先に刃が当たってケガをする可能性も。料理を作り終わったら、包丁だけでもさっと片付けるクセをつけておくことが、包丁を長く使うコツのひとつです。
はじめての一人暮らしの前に、一緒にたくさんの料理を作ろう!
はじめての一人暮らしを前に、親としては心配事が絶えませんが、中でも健康に大きく影響する食事はとくに気をつけてほしいところ。食事が外食やコンビニ弁当ばかりにならないように、家にいるうちにたくさんの食事を一緒に作ってみるのもいいですね。ひとりでもしっかりと料理ができるように、料理の知識や包丁の使い方を教えてあげることが大切です。
おいしい料理を作るために、良い包丁は欠かせません。また良い道具に出会うことで、料理好きになることもあります。ぜひ、使いやすくてちょっと良い包丁を贈り物にして、新しい世界を知るきっかけを作ってあげてください。