唐揚げにレモンかける? かけない? 意見が分かれる理由を研究者に聞いてみた

2018.4.10
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唐揚げにレモンをかけてるイメージ

老若男女、み~んなが大好きな唐揚げ。しかし、その「食べ方」については意見が分かれます。今回注目するのは、唐揚げとレモンの食べ合わせ。レモンをかける派の人は、「唐揚げには、レモンがなくては物足りない」と主張し、かけない派の人は「レモンなんて、邪魔!」と反発。ときに、ちょっとした論争になることも……どうして、こんなにも意見が分かれるんでしょうか。素朴な疑問を味覚のプロに聞いてみました。

唐揚げにレモンをかける派、かけない派がいるのはなぜ?

味香り研究所の研究員、高橋貴洋さん

お話を伺ったのは、食品の味や人の味覚に詳しい、味香り戦略研究所の研究員・髙橋貴洋さん。
「レモンは強い酸味を持つ食べ物ですが、『酸味』は本能的に人間が嫌いな味。食の経験を重ねることで美味しいと感じるようになるものなんです。だから、レモンをかける派の人とかけない派の人には、食の経験に違いがある可能性がありますね。さらに、唐揚げにレモンをかけると酸味が加わってさっぱりするだけでなく、『うま味の感じ方』にも変化が生じます。それも意見が分かれる理由になっているのではないでしょうか」

なぜレモンをかけたくなるの? 味の感じ方はどう変化する?

酸味のうま味抑制による「キレ」イメージ※データ、資料提供:味香り戦略研究所

このグラフは、唐揚げを単体で食べた場合(赤いグラフ)、レモンをかけた場合(青いグラフ)、それぞれに食べ始めてから飲み込むまでの味覚の変化を表したものです。

青いグラフに注目すると、酸味を付加する(レモンをかける)ことで唐揚げのうま味が一時的に抑制されていることがわかります。レモンの酸味によって、キレのあるすっきりとした味わいが生じるのです。その後、レモンの酸味が口の中から消えるにつれ、抑制されたうま味は戻ってきます。唐揚げにレモンをかけるのが好きな人は、このうま味のアップダウンを心地よく感じている、と考えられるんだそう。

レモンをかけたくない理由=「人間の本能」だった!?

では、レモンをかけない派には、どんな理由があるのでしょうか。レモンをかけることで生じる「さっぱり感」を嫌っているだけではない気がしますが……。

人の成長に伴う、味覚の感じ方の変化

人の成長に伴う、味覚の感じ方の変化を示した図

高橋さんによると、「レモンをかけたくない人は、主に2タイプに分けられる」と言います。
ひとつ目は、レモンの「酸味」自体が苦手なタイプ。レモンに限らず酸味が苦手という人は少なくありませんが、これは記事冒頭でも少し触れた通り、人間が持つ本能的な感覚なんだそう。

人間の味覚は甘味、塩味、うま味、酸味、苦味の5種類に分類されますが、このうち、甘味、塩味、うま味は赤ちゃんのころから(先天的に)好きな味。逆に酸味は「腐敗のシグナル」、苦味は「毒のシグナル」と生まれながらに認識されているため、最初は拒否反応を起こします。その後、食べる経験を重ねることで(後天的に)美味しいと感じるようになっていくんだそう。

つまり、レモンの酸味が苦手な人は、酸味の食経験が少なく、慣れていないということ。今は嫌いでも、将来的に好きになる可能性を秘めているとも言えます。

レモンが「邪魔な存在」でしかない理由とは…

唐揚げを揚げているところ

2つ目のタイプは、唐揚げが持つ「強いうま味」がやみつきになっている人。唐揚げは肉や衣そのものが持つうま味に加え、揚げることで生じるメイラード反応による香ばしい風味がさらにうま味を強めます。食べると脳内に興奮物質が放出されるため、その美味しさは忘れがたく、まさに「くせになる」味。その味を求めて食べる人にとって、うま味を抑制するレモンは邪魔な存在でしかないのです。

結局、かける?かけない? ベストな食べ合わせは…

唐揚げにレモンをかける派、かけない派、それぞれの理由とこだわりが見えてきました。いずれも好みの問題なので、どっちが美味しいとは決められませんが、唐揚げの食べ合わせの可能性はさまざま。今回、紹介したのは「唐揚げ単体」で食べることを想定した比較でしたが、実際は、白いごはんやビールなどのお酒と一緒に食べる機会が多いですよね。

「『ビールと一緒に食べるのが好き』『白いごはんが欠かせない』という人は、ビールやごはんが唐揚げのうま味を受け止めるので、一緒に食べるものがレモンの代わりになっている可能性もあります。例えばビールなら、その苦味などが唐揚げのうま味を複雑化させたり、洗い流し等により抑制したりするので、さらにそこにレモンはいらない、という人もいるかもしれません」と高橋さん。

「唐揚げにはレモン!」「唐揚げにレモンなんて邪道!」と決めつけるのではなく、新たな調味料に挑戦してみたり、飲み物を変えてみたりと、「唐揚げを美味しく食べるために、私にぴったりの食べ合わせは何だろう」と試してみると楽しいかもしれませんね。

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