地域限定!全国ローカルごはんの旅#1 耳を食べて厄除け!? 栃木県佐野市の【耳うどん】

2018.5.22
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耳うどんの写真

ここ数年、人気が続いている郷土料理や各地のB級グルメ。でも日本には、まだまだ知られていない、美味しくって面白いローカルごはんがあるんです! その土地ならではの風習や風土、人々の食への思いがぎゅーっと詰まった「ローカルごはん」を発掘し、各地の料理上手にその作り方を教えてもらうこの企画。第1回目は栃木県佐野市の「耳うどん」をご紹介します。

ラーメンで有名な佐野市は、実は小麦の名産地。名物の麺類のなかで、名前も形も異彩を放つ「耳うどん」は、食べると厄除けになる!? という不思議ないわれもあるよう。その実態を探るべく、現地からレポートします!

東京から約2時間……栃木県佐野市は小麦パラダイスだった!

麦畑の写真

栃木県の中でも東京に近い南部に位置するのが「耳うどん」がある佐野市。市内でも北部に位置する山間のエリア、葛生地区が「耳うどん」の発祥の地です。東京から電車で2時間ほどとは思えない、山並みと麦畑が一面に広がります。

小麦の収穫は6月頃。訪れた4月には緑色の穂が輝いていました!

麦の穂の写真

栃木県の小麦の生産量は全国有数! 特に、佐野市を含む県南エリアは水はけがよい土壌、乾燥した気候、冬に雪が少なく日照時間が長いことなどから、麦の生産に適しているんだそう。

取材に訪れた4月の終わりには、冬にまいた種が芽吹き、穂が緑に輝く時期でした。穂が黄色く色づく6~7月には収穫されるといいます。

地元の道の駅には「地粉」がずらり! 手打ちうどん用の道具も並びます

地粉が並ぶ棚の写真

麦畑が広がるエリアの道の駅(どまんなか たぬま)を訪れてみると、売り場の一角には「地粉」がずらり! 地粉とは、その土地で採れた小麦を、その土地で製粉したもの。一般的な小麦粉の多くは、アメリカやカナダ、オーストラリアなどの外国産。国内消費の10%と言われる貴重な国産小麦がこんなに充実しているなんて、小麦の産地ならではの光景です。

「耳うどん」は買って食べるのが一般的!?

市販の耳うどんの写真

同じ道の駅で、生の「耳うどん」も発見! 買って食べるのが一般的なんでしょうか?
「耳うどんは非常に限られた地域に伝わるもの。もともとはお正月に食べるものでしたが、今は通年で食べられています。手間がかかるので、手作りしている家は少ないと思いますね。でも、おじいちゃんやおばあちゃん世代なら、作り方を知っているかもしれません」(マネージャーの田名網徹さん)

成形するのが難しい!? 料理名人に教わる「耳うどん」の作り方

相良トシさんの写真

今回は、葛生地区に住んで約50年の相良トシさん(70歳)に耳うどんの作り方を教えていただきました。畑でたくさんの野菜を育てながら、梅干し、柚子こしょう、果実酒、ジャムなど、なんでも手作りしてしまう料理上手なお母さんです。

気になる「耳うどん」の由来。悪いことを聞かないように、耳を食べちゃう!?

まず気になるのが「耳うどん」の由来。どうして耳の形なんですか?
「『耳を食べてしまえば、その年、悪いこと(噂)を聞くことはない』という言い伝えがあるんですよ。だから、お正月には『今年も1年、人間関係が円満にいくように』と、耳うどんを食べるんです。年越し前にまとめてたくさん作って、お正月の数日間ずっと食べ続けるんです。お客さんに出すのも耳うどん。この地域ならではのお雑煮みたいなものですね」

材料はシンプル。まずはうどんの生地作りからスタート!

耳うどんの材料写真

材料
<耳うどんの生地>
地粉…800g、水…コーヒーカップ2杯
<汁>
鶏もも肉、なると、好みの青菜、にんじん、しいたけ、長ねぎなどの薬味…各適宜
醤油、みりん、だし汁、水…各適宜

粉に少しずつ水を加えながら箸で混ぜ、モロモロした状態にします

粉に水を加えて菜箸で混ぜている写真

この段階では生地が少しパサついていますが、このあと手でこねるので大丈夫なんだそう。
粉はクリームがかった乳白色で、ところどころに茶色の外皮(胚芽やふすま)の粒々が見えるのが「地粉」ならでは。

今回使ったのは800gの地粉。だいたい150個くらいの耳うどんができるんだそう。結構な量に思えるんですが、これでも少なめなんだそう。
「私が子どもの頃は、7人兄弟の大家族だったから、もっとたくさん作っていましたよ」

耳たぶより少しかためになるまでこねます。これは結構な力作業!

相良さんが耳うどんの生地を作っている写真

さらに少しずつ水を加えながら、生地をこねていきます。水加減は粉の状態や気候によって違うので、その見極めには長年の経験が必要です。耳たぶより少しかため、表面がなめらかになったら「こね」は完了。

生地を伸ばすのは、使い続けて50年以上! いまだ現役の製麺機

製麺機で生地を伸ばしている写真

生地を4等分ほどに切って、平たく伸ばしていきますが、ここで登場したのが年代物の製麺機! 聞けば、トシさんが母親から譲り受けたものだと言います。
「子供の頃は、毎日この製麺機で作ったうどんやそばを食べてましたね。あの頃はそれが当たり前だったけど、今思えば、米より小麦がよく採れてたからなんでしょうね」
製麺機で何度か伸ばすと、生地が薄くなるとともに表面がなめらかに。次はいよいよ成形です。

生地を耳うどんのサイズに切りそろえていきます

耳うどんの型紙に合わせて、生地を切っている写真

ここで使う耳うどんの型紙はトシさんのお手製。3.5cm×6cmほどの大きさです。
「きれいに大きさそろえても、ゆでると形は崩れちゃうんだけどね(笑) この型紙は、ちょうど昔のマッチ箱と同じ大きさなんだよ。でも今の人はマッチ箱を知らないかもしれないねぇ」

生地を1枚ずつ折って、「耳」の形に成形していきます

耳うどんを作る過程

成形は、①横半分に折る、②左端を手前に折る、③右端をその上に重ねる、の3ステップ。
「お雛様の着物の(打ち)合わせと同じで、右側が必ず上に来るように折るのが決まり。昔は、大晦日の夜に母や兄弟たちとにぎやかなにおしゃべりしながら、せっせと耳うどんを作ったものです。懐かしいね」

熱湯でゆでたら「水にしばらく浸す」のが、美味しさの秘訣!

耳うどんを茹でている写真

熱湯でゆでること3〜4分ほど。浮いてきたらゆで上がりです。
「ゆで上がったら、水を張った鍋やボウルに入れて、冷蔵庫で冷やすのが大事。昔は鍋ごと外に出して冷やして、そこから食べる分だけ取り出して食べてましたね。水に浸すと生地が水を含んでツルンとなめらかになって、それが美味しいの」

汁は素朴な醤油仕立て。具材は家にあるものでOK

耳うどんの汁を作っている写真

汁に食べやすく切った具材を入れて火を通し、耳うどんを加えて軽く煮こんだら完成です。
「具材は特に決まっていません。そのとき、家にある野菜を入れるだけ。肉は鶏でも豚でも。昔は野菜だけのことが多かったけれど、肉を入れるとうま味が加わるから美味しくなるね」

完成した「耳うどん」は、ふわふわ、ツルっとした食感が新鮮!

耳うどんの完成写真

見た目は、すいとんやほうとうに似ていますが、ふわっとやわらかでツルンとなめらかな食感がなにより新鮮! これは、ゆでてから水につけおく、という耳うどんならではのプロセスの賜物です。想像よりも1個1個のサイズが大きめですが、汁の味がしっかり染み込んでいるので、最後まで飽きずに美味しくいただけます。なかなかお目にかかれないので、見つけたら、ぜひ食べてみてほしい一品です。自分で作っても楽しいですよ!

取材協力:道の駅 どまんなか たぬま http:/domannaka.co.jp/

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