飲み物や食べ物のベストな相性…「フードペアリング」ってなに?
白いごはんにお味噌汁、焼き魚……。そんないつもの晩ごはんに、みなさんはどんな飲み物を合わせていますか?
麦茶や緑茶、中には普通のお水、という方もいらっしゃるかもしれません。ちょっと凝ってごはんを作った日でも、飲み物は適当に選んでしまいがち…という人、意外と多いのではないでしょうか。
そんなときに役に立つのが「フードペアリング」という概念です。別々に食べてもおいしいけれど、合わせて食べるとよりおいしさが増すような飲み物・食べ物の組み合わせを考えるのが、フードペアリングです。
この概念に詳しい、ドリンクコーディネーターの江沢さんに、家庭でもまねできる、フードペアリングの基礎を教えて頂きました!
似ているものと違うもの?フードペアリングの基礎の「き」
—よろしくお願いします。すごく基本的なことなんですが、フードペアリングって一体何ですか?
江沢:フードペアリングは、フランスでは「マリアージュ」と呼ばれている伝統的な考え方です。マリアージュ、というのは「結婚」という意味です。フランスでは結婚になぞらえてこう呼んだのです。
たとえば、生牡蠣にはシャブリ(白ワイン)が合う、と聞いたことはありませんか?これはなぜかと言うと、どちらもフランスが産地だから。日本でも、地場料理に同じ産地の地酒が合う、ということは珍しくないと思います。
同じ大地や風、日光のもとで生まれた食べ物・飲み物は、味にも共通する部分があると考えられてきたのです。
—そう言われると、確かに有名な”食べ合わせ”ってありますね。
江沢:そうでしょう!フードペアリングを考える上でのキーワードは、「同調」と「ギャップ」の2つです。まずは「同調」からご説明しましょう。
これは、香りや味が同じもの、似たもの同士をペアリングする方法です。たとえば、果物を使ったタルトとフルーティーな香りの紅茶、塩、こしょうで味付けしたお肉とスパイシーな香りのワインを合わせる……といった考え方です。
試しに、普段の食事で合わせている飲み物の香りと食べ物の香りを、嗅ぎ比べてみてください。違和感がないようであれば、それは相性がよさそうな“予感の香り”です。
—「同調」はちょっとイメージしやすいですね。ではギャップというのは?
江沢:「ギャップ」は、違った香りや味を持つもの同士をペアリングする方法です。「違うものを合わせちゃったらおいしくないんじゃないの?」と思うかもしれません。しかし、スイカに塩をかけると甘くなるのはみなさんご存じですよね。
ゴルゴンゾーラチーズにはちみつをかけるのも、メロンに生ハムを乗せる、というのも有名だと思います。
これらの例とまったく同じで、違った香りや味を持つものを合わせて変化を楽しむ……という考え方もありなのです!
ハンバーグにはなにが合うの?今日の晩ごはんから使えるペアリング
—ちょっと分かってきました。では、もっと具体的な料理に落とし込んで教えてください!
江沢:はい。ではまず、晩ごはんの定番、ハンバーグで考えてみましょう。
似たもの同士を合わせる「同調」のペアリングであれば、肉汁やソースが濃厚なため、同じく濃厚さのある飲み物がいいですね。とろみのあるパイナップルやマンゴーのジュース、大人の方には、コクのある赤ワインなどがおすすめです。
お肉と赤ワインの相性の良さは、みなさんもご存じではないでしょうか。
—濃厚な食べ物には、同じように味がしっかりした飲み物を合わせる、というわけですね。では、こちらも大定番、焼き魚ではどうでしょうか?
江沢:焼き魚なら、ハンバーグと同じく「同調」のペアリングでアプローチしてみましょうか。脂の乗ったさんまの塩焼き、皮までぱりぱりの焼き鮭……などなど、お魚の種類はたくさんありますが、同じくこんがりとした風味のある飲み物が合うと思います。
苦みや渋みが少なく、香ばしさのあるほうじ茶などが特におすすめですね。
―なるほど。では、定番のおかず、カキフライなどはいかがでしょう?
江沢:揚げ物ですね。今度は、違った風味を持つもの同士を合わせる、「ギャップ」のペアリングで考えてみましょう。
カキフライはもちろん美味しいですが、カキの生臭さとフライの油脂がちょっと気になるところですよね……。普段、カキフライには何をかけて召し上がりますか?
―ソースか、マヨネーズでしょうか。レモンを絞ったりもしますね。
江沢:レモン、絞りますよね!カキフライになぜレモンが合うのかというと、レモンの香りはカキの生臭さを、酸味はフライの塩気を抑える効果を持っているからなんです。
同じことは飲み物にも応用できるので、レモンをぎゅっと絞ったハイボールも、カキフライによく合うはずです。
ノンアルコールなら、ちょっと意外なところでトマトジュースがおすすめです。トマトジュースにはグルタミン酸という旨味成分が含まれており、これがカキの旨味を引き立たせるんですよ。
上手なペアリングのヒントは、それぞれの「強さ」に着目することです。「ギャップ」の場合はどちらかの香りや味が強くても、もう片方がそれを補うことができますが、「同調」の場合は片方の香りや味が強すぎると、バランスが崩れてしまいます。
特に「甘み」は強すぎると味や香りが台無しになってしまうので、バランスには気をつけるようにしましょう。
いつもの「お茶」選びも、フードペアリングの第一歩
—家だと、つい何も考えずにお茶を飲んでしまいがちなんですが。
江沢:いえいえ。お茶でもフードペアリングの考え方を持っていれば、もっと楽しめますよ。お茶の渋みの正体であるタンニンという成分には抗菌作用があり、口の中の油脂を洗い流して香りや味をリセットしてくれる効果があるんです。
レストランのコース料理などの最初によく出てくる炭酸水にも、食欲を増進させる効果の他に、同じようなリセット効果があります。
—なるほど。リセットという考え方もあるんですね。
江沢:はい。「同調」や「ギャップ」の考え方からは少し離れますが、お茶や炭酸水のようなリセット効果を利用するのも立派なフードペアリングです。お茶類は、その発酵度合いによってリセット効果の高さが変わります。
発酵の弱い緑茶やウーロン茶に比べて、発酵の強い紅茶は非常に高いリセット効果を持っているのです。お肉などの脂っぽい料理に紅茶を合わせてみるのも、意外に合うかもしれません。
たとえば、今日の晩ごはんのサラダに少しレモンやオレンジの皮を入れて、同じようにフルーツの皮を入れた炭酸水を合わせてみる。明日の朝ごはんのシリアルにドライフルーツを入れて、ジュースを合わせてみる……。
そんな小さなアイデアも、フードペアリングの立派な第一歩です。
—なんだか、すぐに家で試してみたくなるアイデアばかりですね!
江沢:毎日の食事にベストな組み合わせを考えるのは難しくても、たまには家族で「今日のごはんにはどんな飲み物が合うかな?」と考えてみてください。きっと、いつものひと口がぐっとおいしくなりますよ!
—分かりました。今日はどうもありがとうございました!
~お茶が食べ物をスモークする?中国の紅茶「ラプサンスーチョン」の力~
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