• TOP
  • 食の発見
  • 夏にこそ食べたい!辛い料理の源「唐辛子」にまつわるトリビア
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

夏にこそ食べたい!辛い料理の源「唐辛子」にまつわるトリビア

  • 2017.06.20
  • 食の発見

暑い夏、無性に辛いものが食べたくなることはありませんか?ひんやりとした食べ物も魅力的ですが、暑いときだからこそ、辛いものを食べて汗をかいてさっぱりしたい、という方も多いのではないでしょうか。

そんな辛い料理の源としてメジャーなのは唐辛子。一味や七味唐辛子など薬味や香辛料として世界中の辛い料理に使われていますが、今回はそんな唐辛子について、信州大学農学研究科で品種改良に関する研究を行う松島憲一さんにお話をお聞きしました。

唐辛子を「辛い」と感じるのはなぜ?

唐辛子はなぜ辛いのか。まずはそのメカニズムを解説しましょう。

唐辛子を切ってみると、中は空洞になっていることがわかります。その空洞をさらに隔てる壁の部分「隔壁(かくへき)」には、辛味成分である“カプサイシン”が生成され、保存されています。口の中にある痛みを感じる感覚神経がこのカプサイシンを察知すると「熱くて痛い」という信号を脳に伝え、人は「辛さ」を感じます。

ちなみに唐辛子は食べてもすぐには辛さを感じません。これは、唐辛子の辛味が神経に届くまで時間がかかることから、食べてもすぐには辛さを感じないのです。

唐辛子を使った料理を食べると汗をかくのはなぜ?

カプサイシンを摂取すると、交感神経が刺激され“アドレナリン”というホルモンが分泌されます。このとき、体内に貯蔵していた糖や脂肪が燃えるため、体に熱が発生します。

暑くなると汗をかいて体内の熱を放散させ体温の上昇を防ぐのと同じように、唐辛子を食べると体温が上がるため、汗をかいて体温を下げようとします。唐辛子を食べると暑くなって汗が出るのはこのためです。

チョコレートと唐辛子の相性はばっちり!?唐辛子トリビアまとめ

◎ピーマンは唐辛子の一種

青椒肉絲(チンジャオロース)や肉詰めで活躍する緑鮮やかなピーマン。学名で言えばナス科唐辛子属のCapsicum annuum(カプシクム・アンヌウム)で、“鷹の爪”などの辛い唐辛子と同じ、唐辛子の仲間です。辛味がまったくない、大き目の果実をつける品種群をピーマンやパプリカと呼んでいます。

通常、唐辛子は辛味成分のカプサイシンによって辛くなります。ですが、同じ唐辛子の一種でもピーマンやパプリカはカプサイシンを生成できないため、辛くならないのです。

◎世界一辛い唐辛子は一味の50倍近く辛い

一般的に日本で一味唐辛子として使われている唐辛子は、乾燥物1gあたりに2000μg(マイクログラム/重量の単位。1ug=100万分の1g)のカプサイシンが入っています(*1)。

これに対して、現在、ギネスワールドレコーズで世界一辛い唐辛子として認定されている“キャロライナ・リーパー”<2017年5月現在>には、乾燥物1gあたり100,000μg弱ものカプサイシンが含まれています(*2)。つまり、一味唐辛子の約50倍近く辛いということ。

ちなみに激辛の代名詞のように言われている品種“ハバネロ”に含まれるカプサイシンは20,000μg〜30,000μg(*3)。とても辛いように思われますが、現在のギネスチャンピオンの1/5というからビックリですね。

■出典(*1)、(*3):信州大学松島研究室測定結果「信州大学松島研究室において高速液体クロマトグラフにより測定した結果」より
■出典(*2):ギネスワールドレコーズ(ギネスブック)のスコビル値から換算

◎「種子が一番辛い」は間違い

「唐辛子は種子が一番辛い」という話がありますが、これは間違い。先述したように、唐辛子内部の空洞を隔てる隔壁でカプサイシンが生成されるため、一番辛いのは種子ではなく、隔壁ということになります。

しかし、成熟した果実や乾燥果実の種子はすでにそのカプサイシンが含まれる隔壁や、隔壁に繋がる胎座の部分に付着しています。乾燥果実から取り除かれた種子には、少量ではありますがカプサイシンが含まれている隔壁部分も付着しているため、「種子が辛い」と感じることもあるのです。

◎唐辛子は赤より緑のほうが辛い

唐辛子の真っ赤な色を見ると「辛そう!」という印象を持たれる方も多いはず。しかし、緑色のいわゆる“青唐辛子”も非常に辛いです。

唐辛子は花が咲いて受粉すると、付け根の子房が膨らんでいきます。成長途中の果実は緑色ですが、この緑色の果実の成長が進んでいくと、今度は成熟に転じて赤くなります。唐辛子はどの時点が一番辛いかといえば、最も大きくなって成長が止まる直前、つまり赤くなる直前です。この後、赤く成熟していくにつれ、徐々に辛味は減っていきます。

また風味も大きく変わっていきます。緑の果実は悪くいえば青臭く、よくいえばすっきりとした香りですが、赤くなると甘味や酸味が増すため、なかにはフルーティな風味を楽しめる品種もあります。

◎チョコレートと唐辛子は切っても切れない仲

16世紀初頭、南米アステカの皇帝モンテスマ王は、チョコレートが好物だったといわれています。当時のチョコレートは飲み物で、なんと唐辛子が入っていたのだとか。今でもメキシコには“モレ”というチョコレートにさまざまな唐辛子を加えて作るソースがあり、鶏肉などを煮込む料理で使われています。甘いチョコレートと辛い唐辛子は一見ミスマッチにも思えますが、甘さと辛さがうまく混ざり合ってお互いを引き立て、深みのある味わいになるのだそう。

ご家庭でもココアに少し粉末の唐辛子を振って飲むと、先にココアの甘さが口の中に広まり、後から唐辛子の辛さをじわじわと感じることが出来る新しい味わい方が楽しめます。ぜひ、試してみてくださいね!

◎三大七味唐辛子は薬味が異なる

うどんやそば、豚汁などにかけることも多い薬味、七味唐辛子。これは江戸時代の寛永2年(1625年)に、からしや中島徳右衛門が江戸の両国「薬研堀(やげんぼり)」において七味唐辛子を売り出したのがはじめといわれています。中島徳右衛門は漢方薬をヒントに、さまざまな薬味を調合して七味唐辛子をつくったのです。江戸時代において、いわば当時のファストフードであったうどんやそばをより美味しくしてくれる七味唐辛子は、江戸の名物として全国へ広まりました。

やがて中島家は薬研堀から、現在の浅草へと店舗を移転。店名が“やげん堀中島商店”となったあとも、七味唐辛子は変わらず販売されています。ちなみに日本の三大七味唐辛子は、この他に京都の“七味家本舗”と、信州の“八幡屋礒五郎”を指すといわれています。

これら3軒の七味唐辛子は薬味の調合が少しずつ異なります。江戸やげん堀の七味には“けしの実”が入って香ばしく、京都七味家本舗は“山椒”が際立った香り高い七味。信州八幡屋礒五郎の七味は他の七味には入っていない“生姜”が加えられています。それぞれ、唐辛子の風味をより際立たせるマリアージュが工夫されていることが分かります。

風味豊かな七味唐辛子は、料理の味わいを広げてくれます。たとえば山椒や海苔の配合が多ければすっきりとした後味になるため、ポトフやナポリタンといった洋食にも。柚子の入った七味唐辛子は香り高く、湯豆腐やあたたかいうどんに風味と程よい辛味をもたらします。七味唐辛子を好みに合わせて調合してもらえる店舗で、使いたい料理に合せて相談してみるのも楽しそうですね。

体の新陳代謝をうながす唐辛子の魅力

辛い料理には欠かせない唐辛子のトリビアを紹介してきましたが、新しい発見はありましたか?

唐辛子をつかった辛い料理を食べると、体があたたまり、汗をかくため、体の新陳代謝に効果的だといわれています。暑い季節だからこそ唐辛子が効いた料理を食べて、体をリフレッシュさせましょう!




プロフィール

松島憲一
大阪市生まれ。信州大学農学部園芸農学科卒業、信州大学大学院農学研究科園芸農学専攻修了。農林水産省農林水産技術会議事務局係員などを経て、現在、信州大学学術研究院農学系准教授。専門は植物遺伝育種学で、唐辛子やそばなどの遺伝資源収集評価、有用形質の遺伝解析、さらにはそれら結果を用いた品種改良に関する研究を実施している。博士(農学)。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック