• TOP
  • 大人の食活
  • 健康な体は「腸」からつくろう!サイエンスライター長沼敬憲さんに聞く。腸も体も元気になる食事のとり方
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

健康な体は「腸」からつくろう!サイエンスライター長沼敬憲さんに聞く。腸も体も元気になる食事のとり方

  • 2016.09.13
  • 大人の食活

9月に入り天候不順な日が続くなか、じめじめとした暑さで体調を崩していらっしゃる人も多いのではないでしょうか。

残暑に負けない健康な体をつくるためには、しっかりと栄養をとり体力をつけることが大切です。しかし、そのためにはどのような食事をとればいいのでしょう?

そこで、医療・健康・食にまつわる多くの書籍制作に関わり、「腸脳力 心と身体を変える“底力”は“腸”にある」の著書で知られるサイエンス・エディター&ライターの長沼敬憲さんに、健康な体をつくる食事についてお聞きしました。

健康な体をつくるために、まずは「腸」を整えましょう

腸2

健康な体を食事からどうつくるのか?と考えた時に着目したいのが腸です。

食事とは食べ物を消化管で分解し、体に取り込む行為です。消化管は食道から胃、腸へと続き、肝臓、膵臓なども関わっています。その中で、腸は栄養を消化吸収し不要なものを排泄する「代謝」の中心的な役割を担っています。

動物は植物とは異なり、体内でエネルギーやビタミンを自前で作ることができないため、食事を通じて栄養を摂る必要があります。こうした栄養を取り込む腸は、「最も原始的な臓器」と言われ、生き物が脊椎動物に進化した時にすでに生まれていました。その発生は脳や他の消化管よりも早かったと言われています。

腸には、発生初期段階からすでに、口から取り入れたものが体の栄養になるか、害を及ぼすかを判断する「免疫」という機能が備わっていました。体に必要なものが取り込まれれば、スムーズに代謝されるため「心地よい」という情動(感情の原型にあたるもの)が生まれますし、逆に害になるものを取り込めば代謝が滞り、「不快」という情動が生まれます。

こうした初期の生き物に備わっていた「情動」は生物が進化していくなかでも失われず、人の心や感情の母体となっていったと考えられています。過度のストレスでお通じが悪くなったり気力が低下するのも、そのためです。腸は食べ物から栄養を吸収するだけでなく、心にも影響を与える、人間にとってとても大切な器官なのです。

健康な腸をつくるのは腸内細菌、その栄養になるのは「繊維質」と「糖質」です

13913998_1163042697092875_3018255479015502660_o

大腸には、消化吸収を助け体に有益な働きをする「善玉菌」や、腸内に炎症を起こし体の害になる「悪玉菌」など100兆個にも及ぶ様々な種類の腸内細菌が生息しています。私たちは単独の生き物としてではなく、体の中に住んでいる無数の微生物と共生しながら生きているのです。

腸内で善玉菌の活動が活発になれば腸内環境が良くなり、栄養が効率良く取り込まれ、排泄もスムーズになります。そのため、体調が維持しやすく心身も安定するようになります。健康の土台である腸内環境を整えるためには善玉菌のエサになる食べ物を積極的に取り込まなくてはなりません。このエサになるのが、根菜や海藻類、玄米や胚芽米、雑穀などに含まれる炭水化物です。

炭水化物は糖質と食物繊維に分けられますが、米や小麦を精製(穀物のぬかや胚芽などを取り除くこと)すると食物繊維が失われるため、大腸に棲んでいる善玉菌のエサが減ってしまいます。

ですので、腸内環境を整えるためには、なるべく精製されていないものを摂ることがおすすめです。たとえば精製していない玄米には「胚芽」や「ぬか」が残り、その中には食物繊維はもちろん、代謝に欠かせないビタミンやミネラルも多く含まれています。

玄米が苦手という人は、白米に押し麦やヒエ・アワなどの雑穀を混ぜて食べるといいでしょう。また、パンを食べる場合も全粒粉やライ麦を含んだものをゆっくり噛んで食べましょう。

こうした精製していない穀類などのほかにも、乳酸菌が含まれた「ぬか漬け」「味噌」、悪玉菌の働きを抑える納豆菌を含んだ「納豆」など、腸内環境を整えてくれる菌を多く含んだ発酵食品を摂ることもおすすめです。

未精製の穀類・根菜・海藻・味噌・納豆などは、私たちの祖先が当たり前のように口にしてきた食べ物でした。日本の伝統食は、実は腸に優しく体の健康を維持する食事だったのです。

肉食は日本人には合わない?私たちの体に合った食事について

長沼さん食事2

私自身、腸内の環境を整えるために、自宅での食事は穀類や海藻・発酵食品など植物性の食材を食べることを心がけています。しかし、肉類などに含まれる動物性タンパク質が体に不要というわけではありません。

体は新陳代謝を繰り返していますから、新しい細胞の材料となるタンパク質が必要です。食事は外食がほとんどという方も多いと思いますが、外食のおかずは肉や魚がメインの料理が多く、繊維質を含んだ野菜は不足してしまいがちです。ですので、自宅では植物性の食材を意識して摂るようにしています。

もともと日本人は縄文時代の頃から植物性の食材を主体にした食事をとっており、肉食にはあまり依存してきませんでした。穀物を含めた野菜+発酵食品に、海の幸(魚介類)が加わったのが日本食のベースで、日本人はこうした食事に体を適応させていきました。日本人が牛や豚などの畜肉を食べるようになったのは明治以降のことで、欧米人に比べると肉食に適応していない面があります。

生まれ育った土地の食文化を大事にするという意識を持ちつつ、一人一人の体質は異なり、腸内に棲んでいる菌の種類も異なっていると考えて、一つの食事法を信じるのではなく、常にお腹の調子を基準にした食事を心がけることが大切です。

どのくらいの量の肉や野菜をとれば健康的な腸内環境が維持できるか、どのような内容のおかずを増やせばお腹の調子が良くなるのか、いろいろな食材を食べながら、お通じの状態などで確かめていくと良いかもしれません。

栄養素はあくまで肩書き。自分なりの「体にいい食事」の見つけ方

DSC_0233

体質を決める要素は遺伝的なものもありますが、生活環境に影響を受ける面も少なくありません。分かりやすい例で言うと、アレルギーになりやすい人とそうでない人、牛乳を飲んでお腹を壊しやすい人とそうでない人など、人それぞれですよね。

食べ物の栄養価はそこに含まれる栄養素やカロリーなどではかることができますが、それは一つの目安であり、人でいう「肩書き」のようなものです。

人も肩書きを見ただけでは、性格や価値観までわかりませんよね? 肩書きが立派であっても自分には合わないと感じる人もいると思います。人づきあいと同様に多少の時間はかかりますが、食べ物も実際に食べてお付き合いしていかないと、自分の体に合っているかどうかは分かりません。

自分に合った健康な食事は、「この栄養が体に良いと本で読んだから」「これは体に悪いとテレビで言っていたから」と頭の中だけで組み立てて作れるものではありません。ある程度の正解は得られますが、お腹の調子がいいかどうかなど、「体の声」を聞きながら、ゆっくりと見つけていく必要があるのです。

今回ご紹介した玄米などの未精製の穀類、発酵食品などを中心とした食事も、「体にいい食事」の“流派”のひとつでしかありません。私自身は日本人の過去の歴史をふまえつつ、そうした食事の良いところをお伝えしていますが、あまり排他的にはならないことを心がけてください。

なぜなら、腸という器官は何でも受け入れて、時間をかけてでも消化しようとしてくれる、とても寛容な器の大きな臓器だからです。実際、腸を大事にしていくと、ただ体調がよくなるだけでなく心が安定し、あれはだめ、これは間違っていると非難する気持ちが減っていくように思います。

少し難しい話になってしまったかもしれませんが、まずは腸を元気にするために食事の内容を見直していきましょう。従来の栄養学の知識も大事にしつつ、お腹(腸)の反応はどうなのか、という視点を意識してみる。それだけでも食事の内容は変化し、毎日の体調管理や体力づくりに役立っていくと思います。自分の体の感覚と向き合いながら、ご自身の体に合った食事を見つけていきましょう。

プロフィール

プロフィール

長沼敬憲/サイエンス・エディター&ライター
1969年山梨県生まれ。明治大学農学部卒。20代の頃より身体論、生命論に興味を持ち、30代で医療・健康・食・生命科学の分野の取材を開始、同分野の多くの医師、研究者の知遇を得て、食と生命、身体(肉体・感情・意識)との関わりについて理解を深めている。 主な著書は、ロングセラーになった『腸脳力~心と身体を変える【底力】は【腸】にある』(BABジャパン)、「この「食べ方」で腸はみるみる元気になる!」(三笠書房)など。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック