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よみ聞かせで好き嫌いがなおる!? 絵本作家スギヤマカナヨさんに聞く、絵本と食育の関係。

  • 2016.08.30
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お子さんが料理を前にして、「食べたくない!」「これはヤダ!」と嫌がってしまったことはありませんか?子どもが好き嫌いをしてしまう原因は、大人に比べて味覚が敏感で、食の経験が乏しいからです。

味覚の中で、苦味は毒物、酸味は腐敗物を区別するためのものだと言われています。そのため、苦味や酸味を体に悪いものだと感じてしまい、苦手な食べ物ができてしまうのです。

この行動は、ある意味人間として自然な反応ですが、好き嫌いがあると、栄養価が偏ってしまいそうで心配ですよね。どうにかして、子どもの好き嫌いを減らす方法はないでしょうか?

そこで、絵本を使ってみませんか?子どもでも読みやすい絵本を使えば、食べ物に親近感や興味が湧いて、嫌いなものが食べられるようになるお子さんも多いそうです。

今回は、絵本作家で、2児の母でもあるスギヤマカナヨさんに、絵本を使った食育についてお話を伺います!

絵本はコミュニケーションの道具、好き嫌いは「好奇心」で直せます

私は、1990年からフリーの絵本作家になり、33歳ではじめての子が生まれました。現在子どもは、高校1年生の女の子と、小学3年生の男の子の二人。私の絵本も、育児体験から生まれたものが多いんです。

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たとえば、「ぼくのおべんとう(写真右上、青色の本)」や「いっしょにごはん(写真左下)」などの絵本は、まさに子育てからヒントを得て生まれたものです。

これらの絵本はただ読み聞かせるだけでなく、親子でコミュニケーションする道具にもなるんですよ。

「ぼくのおべんとう」には「わたしのおべんとう」という姉妹作があって、ページを合わせるとおかずを交換できるようになっています。片方を子どもが読んで、片方をお母さんが読めば、お弁当のおかずを交換しているような会話ができるんです。

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「いっしょにごはん」は、二人で向かい合って読む絵本です。本を開くと、ハンバーグやおにぎり、味噌汁やデザートなどのイラストが描かれていて、このイラストを使って、ままごと遊びができます。

読者の方から「子どもはブロッコリーが食べられないんですが、絵本だと食べてくれるんです」と感想をいただいたこともありますね。

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小さなお子さんと食事をする時は、「汁物をこぼさないかしら?」「野菜もちゃんと食べるかしら?」と、食べさせることに必死になってしまうことも多々あります。

絵本の中ならば、そんな心配をする必要がありません。味噌汁を「ふうふう」したり、おにぎりを「あーん」と食べさせ合ったり、親子で会話を楽しみながら食育ができると思います。

「食べることって楽しい」と感じてもらえれば、子どもは積極的に料理を食べてくれるはず。子どもに嫌いなものがある時は、経験上、無理やり食べさせるのではなく、食に対する好奇心を持ってもらうことが大切なのかな、と考えています。

私は、小学校などで絵本を使って食育のワークショップをすることがありますが、苦手なものがある子でも、食に対する興味を持つと、「食べてみよう」という気になることが多いんです。

「嫌いなものでも食べなきゃいけないよ」と価値観を伝えるだけでは子どもには響きません。

なぜ食べ物がその名前になっているか、国によって食べ方はどう違うかなど、子どもが面白がってくれそうなことを伝えたり、子どもが自分で調理してみる機会があると、「苦手だけど食べてみようかな」とそそられると思います。

「こんな味もあるよ」と教えることで、食べられるものが増えるかも!

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私は子どもに多くの絵本を読み聞かせてきました。日頃、仕事で忙しいので、せめて読み聞かせくらいはしたいと思い、時には図書館で3週間に60冊の本を借りてきたこともあります。

本の数が多くなってしまったのは、日本の昔話や図鑑、自然科学や写真絵本まで、いろんな絵本に触れさせてあげたかったから。

味覚と同じように、生まれてすぐの子どもって、はじめてのことばかり。「こんなものもあるよ」と親が教えてあげれば、子どもの世界が広がり、少しずつ好みが生じ、自ら選べるようになります。

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※写真左、高校一年生の娘さん

子どもにいろんな絵本を読んだように、食に関しても離乳食の時期から、様々なものを食べさせていました。野菜や納豆などを一口ずつ、一般的には子どもに与えないコーヒーをぺろっとなめさせたこともあります。その時は、渋い顔をしていましたね。

こんなものも食べるんだ!と驚きながら、ちょっとずつ色んな味を味わせてきたせいか、私の子どもには好き嫌いがありません。

私自身も、食に対する好奇心が強いので、子どもがそれを受け継いでいるようで、自分から「〜が食べてみたい」と言うんです。

映画「ナルニア国物語」に、ターキッシュ・デライト(砂糖にデンプンとナッツを加えて作る洋風の求肥)というお菓子が出てきた時は、子どもと一緒に「食べたい」と好奇心が湧き、海外の友人に連絡して送ってもらったこともあります。

先日も下の子が「いちじくを食べたことがない」と言うので、一緒に買いに行き、近所で実をつけた木を探して、見に行きました。

子どもは「プチプチしているね」と言いながらひとつしか食べなかったので、生食はあまり好きではなかったようです。でも、冷凍した物を半解凍して出したら「美味しい」と言っていました。

ジャムやコンポートにして、食ベ方にバリエーションがあることも、こういう機会を利用しながら伝えていければと思います。

まず、まわりの大人が食に興味を持つこと、「こんなものもあるよ」とお子さんの世界を広げてあげることがお子さんの好き嫌いを直す第一歩なのかもしれません。

食育は旦那さんの協力を含め、家族全員でしましょう!

子どもにはたくさんの味に触れてもらいたいですし、栄養が偏るのもよくないので、サラダや味噌汁にたっぷり具材を入れて食材の品目を増やしたり、同じメニューになりすぎたりしないように気をつけています。

とはいえ、『やらなきゃいけない』と思ってしまうとストレスになりますし、その時は冷凍食品も活用しています。

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娘は高校1年生なので、毎日お弁当を持たせるのですが、家事が面倒だと感じる時もありますし、冷凍食品や昨晩の残り物を詰めることもあります。

でも、必ず一品は朝に作った惣菜を入れるようにしているんです。そのルールというか、こだわりが生まれたのは、母からの影響が大きいですね。

私の母親は、毎朝家族4人分のお弁当を作り、ひなまつりやお月見などの年中行事には、ちらし寿司や月見団子を出してくれていました。

私もそれに習って、お弁当には手づくりの惣菜を入れるよう心掛けたり、年中行事には行事食を出すようにしています。

とはいえ、仕事と育児の両立が大変な時は、夫に食材を買ってきてもらったり、料理を手伝ってもらったりして、協力をお願いすることも多いですね。ひとりで食育するのは大変なので、時には夫や家族の協力も必要だと思います。

子どもは”楽しい”に正直。絵本で食の楽しさを伝えましょう!

私は食も絵本も、子どもの成長には欠かせないと思うんです。全く別のものと思われるかもしれませんが、絵本の世界と食の世界は、つながるところも多いのです。

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※「絵本バイキング」で配った小冊子

本をただ本として捉えるのではなく、子どもと他の世界をつなぐ扉と考えると分かりやすいかもしれません。

たとえば、小学生を対象に「絵本バイキング」というワークショップを行いました。そのワークショップの中では、絵本と、その本に出てくる料理を通じて食育を行ったんです。

たとえば、絵本「ぐりとぐら」に出てくる大きなカステラや、「11ぴきのねことあほうどり」の中に出てくるコロッケなど、絵本に出てくる食べ物を「サラダ・スープ」「おかず」「くだもの」などのブースに分けました。

子ども達はバイキングのように好きな食べ物を選び、各ブースで読みたい本を決め、あらかじめ配っておいた小冊子(メニュー)に、食べ物のカードを貼り、選んだ料理と絵本のタイトルを書き込むのです。

これなら、好きな料理という視点から、絵本にも興味を持ってもらえるはず。この小冊子(メニュー)は、そのまま、その子の読みたい本のリストになります。中には1年間この冊子を持って図書館に通った子もいるんです。

絵本は食べ物の知識だけでなく、背景や別の側面も伝えてくれます。それは子どもの世界観を広げ、食の楽しみや興味をそそり、ひいては自ら食べることへつなげてくれると思います。

嫌いなものがあるから食べさせようとするだけでなく、一緒に食の雑学を学んだり、絵本を通じて食に関する発見や驚きを知ることが、好き嫌いを克服することはもとより、食を楽しむきっかけになるのではないでしょうか。


プロフィール

プロフィール

スギヤマカナヨ/絵本作家
静岡県三島市生まれ。イラストレーター、絵本作家。1989年、東京学芸大学初等科美術卒業後、ステーショナリーデザイナーとしても活躍。絵本に『K・スギャーマ博士の動物図鑑』『K・スギャーマ博士の植物図鑑』(以上、絵本館)など。1998年、『ペンギンの本』で講談社出版文化賞絵本賞受賞。 近著に『ぼくのまちをつくろう!』(理論社)『やってみよう!あいうえお』(くもん出版)など。

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