まるで採れたての食感と栄養!
技術力で叶えた“新”冷凍ブロッコリー

水っぽい・甘くない・柔らかすぎる
長年の課題をどう乗り越えるか
冷凍ブロッコリーは、手軽さや汎用性の高さから、多くの生活者に支持されている冷凍食品です。しかし一方で、生鮮ブロッコリーと比べて「水っぽい」「甘みが感じられない」「食感が柔らかすぎる」といった声もあり、私たちも以前から品質改善の必要性を感じていました。そこでまずは業務用のブロッコリーを対象に、長年の課題である冷凍ブロッコリーの改良に踏み出しました。
こうした課題の背景には、冷凍ブロッコリーの製造工程におけるいくつかの要因が絡んでいました。その中でも特に影響が大きいのが「ボイル加熱」です。熱湯による加熱方法だと加熱中に吸水しやすく、解凍時に余分な水分が出てしまうため、食べたときに水っぽさが際立ってしまうのです。食感の柔らかさも同様です。
甘みの乏しさについては、糖やアミノ酸などが、ボイル加熱や水で冷却することによって流れ出してしまうことが原因でした。厳しい衛生基準を満たすための十分な加熱、凍結による影響、それぞれが積み重なり、本来の歯ごたえとおいしさが損なわれていたのです。
これらの技術的課題を解決するのは簡単ではありませんでしたが、冷凍野菜の価値を高めていくためには、避けては通れないものでした。ブロッコリー本来のおいしさを、冷凍食品でどう再現するか。その原点に立ち返り、加熱方法そのものを見直すところから検討していきました。
過熱蒸気を用いた独自製法を開発
ブロッコリー本来のおいしさを守る
そこで着目したのが「過熱蒸気」を活用した独自の加熱工程です。もともと畜肉製品では一定の実績がありましたが、野菜への応用事例はまだ限られていました。「過熱蒸気が野菜にも活用できるのではないか」という仮説のもと研究を重ねた結果、水っぽさや食感、栄養素の保持といった面で、大きな改善が見込めることが分かってきたのです。
過熱蒸気とは、通常の蒸気をさらに加熱し、100℃を超える高温状態にしたものです。高温状態を保ったまま対象物に直接当てることで、加熱効率が高く、さらに、ビタミンCや糖などの栄養素を保持しやすく、食感の維持にもつながります。
また、過熱蒸気を用いた製法は、空気中の酸素が極めて少ないという特性もあります。加熱中の酸化を抑えることができるため、ブロッコリー本来の鮮やかな色味が残るというメリットもありました。
ただし、技術的に実現するのは容易ではありません。ニチレイフーズの冷凍ブロッコリーは、解凍後にそのまま食べられるほどの衛生基準を満たす必要があります。衛生を担保する十分な加熱と、食感を壊さない適度な加熱。この両立が最大の課題でした。温度や時間を細かく調整し、官能評価と微生物検査の両面から何度も検証を重ねることで、ようやく最適解にたどり着くことができました。
今回開発した独自製法により、水っぽさ・甘みの乏しさ・柔らかすぎる食感という三つの課題を同時に解消。見た目、味、扱いやすさ、すべてにおいて冷凍ブロッコリーの新たな価値を提供できる商品に仕上がったと感じています。

ブロッコリーから広がる冷凍野菜の未来
野菜が持つ本来の力を食卓に届ける
ブロッコリーはビタミンCが豊富なだけでなく、植物性たんぱく質の含有量も高く、栄養バランスに優れた野菜です。さらに、近年は「スルフォラファン」といった成分にも注目が集まっています。私たちは外部研究機関と共同でこのスルフォラファンの含有量を高める加工技術の開発に取り組み、すでに特許出願を行いました。今後は、こうした成分の活用を冷凍食品にとどまらず、健康食品など様々な形で展開していく可能性も視野に入れています。
また、今回確立した独自製法のノウハウは、他の冷凍野菜への展開も進めているところです。例えば、ほうれん草やコーンといった野菜を対象に、素材ごとの特性に合わせた調整を重ねながら商品化を目指しています。加えて、ブロッコリーに関しても家庭用への展開など、用途やニーズに応じた簡便商品の開発に注力しています。
冷凍食品の価値は、単なる利便性にとどまりません。調理の手間を減らし、価格変動にも左右されにくく、栄養価を損なわず食材を安定して供給できる。私たちは、こうした冷凍食品の特性を生かしながら、野菜が本来持つ力を最大限に引き出す加工技術や商品設計を通じて、健康的な食生活に貢献したいと考えています。誰もが手に取りやすく、日常的に続けられる形で、野菜の持つ価値を届けていくこと。それが、私たち冷凍食品メーカーの使命だと感じています。

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