2022年2月に今までにない画期的な製造ラインを新設したニチレイフーズの山形工場。その新ラインでは『冷やし中華』(期間限定)や『香ばし麺の五目あんかけ焼そば』などの進化系個食麺が続々と誕生しています。その裏側を探るべく、編集部が特別に工場見学することに! 独自の製造ラインやおいしさの秘密に迫るとともに、社会課題や地域貢献への取り組みをご紹介します。
ニチレイフーズ山形工場ではどんな商品が製造されているの?
麺のおいしさの秘密は、こだわりの自家製麺と焼きの工程にあり!
CO2排出量やプラ使用量を削減するさまざまな取り組み
地元の親子を招いた「親子環境教室」で地域に貢献
ニチレイフーズ山形工場ではどんな商品が製造されているの?
1957年に設立し、今年で67周年を迎える山形工場。主に常温保存のレトルトパウチ食品(調理済み加工食品)を生産し、業務用カレーは業界トップシェアを誇ります。そのほかにも、中華スープやソース類などの商品を主軸に生産してきました。
近年の「女性・高齢者の就業率の高まり」や「世帯の少人数化、単独世帯の増加」などを背景に、個食タイプを中心とするパーソナルユース商品のニーズが高まったことから、山形工場ではそのニーズに応える新ラインを2022年2月に新設。『冷やし中華』(期間限定)や『香ばし麺の五目あんかけ焼そば』など1人前の冷凍麺商品の製造をスタートさせました。
『香ばし麺の五目あんかけ焼そば』は、こんがり焼きつけたもちもちの太麺に、白菜、筍、豚肉、にんじん、チンゲン菜、きくらげの6種の大きな具がたっぷり入ったあんが絡んだ人気商品。今回はこの商品が製造される様子を見学しました。
麺のおいしさの秘密は、こだわりの自家製麺と焼きの工程にあり!
さっそく『香ばし麺の五目あんかけ焼そば』が作られている現場を見学。『香ばし麺の五目あんかけ焼そば』をはじめ、山形工場で作られている商品に使用する麺はすべて、小麦粉の配合から加水まで、いちから全工程を工場内で行っています。練った麺生地は機械で段階的に薄くのばされ、切る工程へ。
山形工場商品開発グループ・八鍬さん
『香ばし麺の五目あんかけ焼そば』は粉の配合に工夫をすることで、もちっとした食感にしています。また、1年を通して麺のクオリティを保つため、生地に入れる水の温度を日々調整しています。そして、一見分かりづらいですが、食感の違いも楽しんでいただけるよう、実は太さが異なる2種類の麺を使用しているんですよ。
できあがった麺はすぐにゆでる工程へ。ふつふつと沸騰した熱湯でゆでた後に、すぐ冷水で麺をしめることがポイント。家庭で加熱調理したときに、打ち立て麺のようなおいしさが味わえます。
小分けにされた麺は、専用の容器に入れられて、焼きの工程に移ります。
山形工場商品開発グループ・八鍬さん
『香ばし麺の五目あんかけ焼そば』のこだわりは麺を工場でしっかりと焼いて急速凍結すること。家庭で電子レンジ調理した際、麺にさらに焼き色が付き香ばしい香りが広がり、五感でおいしさを実感していただけるあんかけ焼そばが完成する独自の技術なんです。
麺の次はあんの工程へ。実はあんを入れるトレーにもおいしさの秘密が! 『香ばし麺の五目あんかけ焼そば』のトレーを見てみると、底の中央が隆起したデザインになっています。これは、あんの具材が真ん中に固まらずにトレー全体にいきわたるように、また加熱調理した際に温度むらができないように、と何度も試行錯誤を重ねて完成した形です。
トレーに入った具材の上から、あんが流し入れられ、冷凍の工程へ。
冷凍後は最後の仕上げの包装の工程です。大きなロール状のパッケージがセッティングされた機械を通過して、完成した商品が続々と出てきます。
山形工場商品開発グループ・八鍬さん
『香ばし麺の五目あんかけ焼そば』をはじめ、『極太つけ麺』『カレーうどん』『冷やし中華』(期間限定)『三ツ星プレート』シリーズのパスタなど、異なる種類の麺類をすべてこの新しいラインひとつで作っています。『香ばし麺の五目あんかけ焼そば』はもちっとした食感になるように、『冷やし中華』はこしのある食感になるようになど、商品によって粉の配合や工程の設定を変えることができるのが、この山形工場の新ラインの特徴であり、強みですね。
CO2排出量やプラ使用量を削減するさまざまな取り組み
山形工場では新ラインの設置とともに、CO2排出量やプラスチックの使用量を削減するなど環境対応の取り組みを強化しています。
CO2フリー電気の活用でCO2の排出ゼロを実現
山形県内の水力発電所にて発電された自然エネルギー由来の電力「よりそう、再エネ電気」を使用することで、使用電力にかかるCO2排出量をゼロに。また、エネルギーの地産地消にも寄与しています。
そして、工場の一部の屋根には太陽光パネルが設置され、日中の冷凍倉庫の使用電力をほぼ賄っています。
また、食品を冷凍する冷凍機については、地球温暖化係数の高いフロンではなく、自然界に存在するCO2やアンモニアを冷媒として使用する自然冷媒冷凍機を採用し、脱フロン化を実現しました。
梱包する箱のバンドレス化でプラスチック使用量を大幅カット
商品を段ボールに詰めて出荷する際、今までは2箱を積み上げて1セットとし、プラスチックバンドで結束していましたが、新ラインで作られる商品は、すべて単箱仕様に変更。年間のプラスチックバンド使用量の大幅削減につながっています。
山形工場技術グループ・北條さん
数年前からプラスチック削減に向けて動いていましたが、新ラインを設置したことでよりスピードアップしました。新ラインで生産している『香ばし麺の五目あんかけ焼そば』『極太つけ麺』『カレーうどん』『冷やし中華』(夏季限定)『三ツ星プレート』シリーズ、すべてバンドレス化を実現しています。
地元の親子を招いた「親子環境教室」で地域に貢献
新ラインの設置とともに始めた試みは他にもあります。それが、工場内に入ることなく、子どもでもスムーズに新ラインでの製造過程の一部を見ることができる見学通路。普通、工場内を見学する際には、衛生面を徹底するため、専用の服に身を包み、帽子をかぶり、長靴に履き替える必要があります。この一連の行動は子どもにとってはハードルが高いもの。そこで、着替えたりすることなく、気軽に見学できる通路を新設し、小さな子どもの目線からでも工場の様子が見られるよう、大きなガラス窓を採用しました。
その見学通路を活用して、2023年11月に初めて実施したのが、地元・天童市と共同で行った「親子環境教室」。山形工場で実施している環境対応の取り組みを工場の社員が分かりやすく説明しながら行う工場見学です。カレーソースと具材を自由に選んで作るオリジナルのレトルトカレー作り、環境問題クイズ、試食会など盛りだくさんの内容で、10組の親子を招待して行われました。
山形工場技術グループ・北條さん
自治体と一緒になって地域貢献できることに取り組みたいという思いがずっとあったので、今後はニチレイフーズの工場見学を地元の小学校の社会科見学の定番にしていければと思っています。工場の見学を通して、製造業に興味をもっていただき、将来私たちと同じようにモノづくりをする仲間になっていただけると嬉しいですね。
実際に参加したお子さんたちの感想を、一部ご紹介します。
「クイズで環境のことを知れて面白かった」
「レトルトカレー作りが楽しかった! 食べるのが楽しみです」
「また見学に来たいです!」
また、親御さんたちからはこんな感想も。
「子どもと環境について話すきっかけになりました」
「どのように冷凍食品が作られているか見ることができ、子どもが食に興味を持ってくれたと思います」
最後に、山形工場についての思いやこれからの抱負について、工場長の松下さんにお話を伺いました。
山形工場長・松下さん
製麺は粉を配合するところから、また調味料の配合もすべて工場内で行っています。ニチレイフーズには、「ほんの少しの、その差にこだわる。®」というブランドステートメントがあります。生産工場は、一人分を丁寧につくるのと同じ思いで料理する厨房であり、そのままご家庭にお届けする、という信念があります。これからも変わらず高齢者からお子さんまで安心して食べていただける商品、そして社会のニーズにあったパーソナルユース商品作りを加速していきたいですね。
長い歴史を誇る常温食品と、新設ライン誕生によって冷凍個食麺の2本柱になった山形工場では、地産地消のエネルギーを使いながら環境対応にも取り組み、また「親子環境教室」などを通じて、地域貢献も活発に行うことで、さらに地元に根差した工場として進化し続けています。
※「親子環境教室」は招待制のイベントです。工場見学の一般募集は現在行っておりません。