AI活用で鶏肉検査を自動化!
未知の領域に挑んだ装置開発

そこで当社は、AI技術を活用した装置を独自開発しました。本取り組みについて、装置開発グループの吾郷友亮氏、下坂和花奈氏が詳しく解説します。
血合いの検査・除去を手作業で実施。
作業負荷とロス発生が課題に
ニチレイフーズでは、原料の品質保持・管理を目的として金属検査やX線検査などを導入しています。しかし、鶏肉の原料については夾雑物と呼ばれる血合いや羽根を機械で見つけるのが難しいため、人間が手や目視で検品を行なっていました。この工程には多くの人員が必要となり、立ち仕事で重労働であることに加え、熟練の技術とノウハウも求められます。
近年、少子高齢化による生産年齢人口の減少が進行し、働き方改革による労働時間の制約もある中で、従来の方法では将来的に人員の確保が難しくなり、人手不足に陥ってしまう可能性があります。
こうした課題の解決を目指して、2017年頃から装置開発グループが着手したのが、AI技術を活用した鶏肉検査装置の開発です。以前から当社の研究開発グループとコネクションのあった近畿大学の竹田史章教授にご協力いただき、AI技術で鶏肉の血合いを選別する技術の共同開発をスタートさせました。また、当時は鶏肉の夾雑物を検知・除去するような機械は世の中に存在しませんでした。そこで、検知・除去を行う装置を設計から開発、施工、運用までワンストップで独自開発することになりました。

設計から施工まで一気通貫で開発。
最適解を求めて試行錯誤を重ねる
今回の装置開発では、人間が行っている作業を「見る」「判断する」「行動する」という3つの要素に分解した上で、「見る=カメラ撮影」「判断する=AI」「行動する=自動除去」といった形で、各要素を技術的に自動化する仕組みを設計していきました。
ただし、各要素技術の専門家や既製品は存在しますが、食品検査・除去の目的で全工程をワンストップでつなげている事例はどこにもありません。そのため、産業用カメラや光学機器の展示会に参加したり、光に関する専門書を読み漁ったり、システムや制御に詳しい社内メンバーに作り方を教えてもらったりと、地道に情報収集と試作を重ねながら構想を固めていきました。
竹田教授をはじめとする近畿大学のご尽力もあって、2018年には鶏肉原料をカメラで撮影し、AIが選別する技術を実現することができました。しかし、実用化に向けて最も苦労したのが「行動する=自動除去」の部分の開発です。物理的な制約や通信の規格が多数ある中で、どのようなシステムを構築すれば安定的かつ精度高く動作するのか、その最適解を求めて試行錯誤する日々が続きました。
例えば、人間が鶏肉の血合いを除去する時は、鶏肉を手で押さえ、包丁を当てて、取り除くという動作を行います。この一連の動きを機械で実現するために、多くの制約を考慮しながら仕組みを構築しなければなりません。
同様に、AIに学習させる教示データも非常に重要です。血合いや羽根のサイズや位置、角度などが異なる中で、際どい画像を学習させると判定の精度が落ちてしまいますし、精度を高めようとすればするほどコストがかかってしまいます。実用化できるレベルをどこに設定するのか、現場の意見やノウハウも参考にしながらロジックを組んでいきました。

従業員の作業負荷を大幅に改善!
約70%のフードロス削減効果も
こうした開発を経て、2019年より工場への導入が順次スタート。手作業から自動化に移行したことで、従業員の作業負荷が大幅に削減されました。さらに、手作業では問題ない部分を切り取ってしまうこともありましたが、血合いをピンポイントで除去できるようになったことで、除去量を約70%減らし、フードロス削減にもつながっています。トライ&エラーを繰り返していた頃から温かく見守ってくださっていた役員の方々にも評価され、特許出願し技術としても認められました。
さらに、本技術を応用してチャーハンの焦げを自動検品・除去する装置を開発し、2023年よりグループ会社のキューレイの工場に導入しています。この取り組みは先進的かつユニークな事例として評価され、株式会社ニチレイの「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2024」選出に貢献することができました。
食品メーカーでありながら、新しい装置を設計から開発、施工、運用までをワンストップで実現できる人材がいることは、ニチレイフーズの大きな強みだと思います。そして、新しい装置の開発に積極的に協力してくれた工場メンバーの存在も大きな推進力となっています。
そのような技術力と組織風土を最大限に生かしながら、より多くの現場の業務効率化を推進していくとともに、今後もさらに高度な技術の独自開発にチャレンジしてまいります。

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