2022年3月に発売されるやいなや、電子レンジで冷たく調理するというその画期的な調理法が注目を集め、200万食以上の大ヒットを記録した『冷やし中華』。その人気の背景には、業界初の調理方法はもちろん、つるっとしたのど越しでコシのある麺、甘味と酸味が絶妙にマッチした特製醤油だれ、彩り豊かな具材など、ニチレイフーズがこだわり抜いたおいしさがありました。
そこで開発メンバーに、『冷やし中華』の開発秘話をインタビュー。2023年3月のリニューアルについても語ってもらいました。
【参加者プロフィール】
奥村 尚さん
商品開発部商品管理グループ
秋葉雄介さん
技術戦略部エンジニアリンググループ
酒井信一さん
商品開発部第一ユニット中華・スナックグループ
蟹沢壮平さん
家庭用事業部家庭用商品グループ
北條優美さん
山形工場技術グループ
今野保幸さん
山形工場製造グループ
電子レンジで調理する『冷やし中華』の原石は約20年前の特許技術にあり
――『冷やし中華』を開発する話が浮上したときの、率直な感想は?
北條さん
電子レンジだけで調理できる冷やし中華は業界初だったので、世の中にないものを作るんだな、と背筋が伸びる思いでした。
酒井さん
最初は正直、なんだかわからなかったです(笑)。電子レンジで冷たいものを作るという発想が自分にはなかったので。でも、世の中にないものを作るわけだから、すごい面白いな、どうやったらできるかな、と考えました。
秋葉さん
インパクトが強い商品なので、これはありだ! と思いました。ただ、麺は想定内でも冷たい麺というのは想定外だったので、冷たく仕上げる方法に頭を悩ませました。
――レンチンして冷たく調理する『冷やし中華』の技術はどうやって生まれたんですか?
奥村さん
冷やし中華の案が出てきたときに、頭に浮かんだのは2008年に特許取得した技術でした。袋の中に麺とたれ、氷を入れて、電子レンジで加熱した後に混ぜるという技術だったんですが、それだと麺がたれを吸ってしまい見た目と食感が悪くなります。そこで今回は、その技術を応用して袋ではなく、トレーに入れることを考えました。
酒井さん
2008年の特許技術をもとにもう一段階上げなきゃ、と奮起しました。そこで、理想とする冷やし中華を実現するには、麺とたれを別にすることが必要不可欠だという結論に達したんです。
奥村さん
“冷やしきる”というところに価値があると考えられたので、別添えにしたたれの機能を最大限に発揮するために、たれで麺を冷やすこともとことん突き詰めました。電子レンジで温めた麺に氷を絡ませて、さらに冷たいたれで冷やしきることが、麺のおいしさにつながっています。
おいしさを追求するあまり製麺の現場に弟子入り!? こだわりの自家製麺
――麺づくりはどのようにアプローチされたんでしょうか?
奥村さん
真摯に麺づくりに向き合い、王道をいきシンプルに作っています。ノウハウがなかったのが、逆に良かった点でもあると思っています。
蟹沢さん
冷やし中華がおいしいお店をメンバーみんなで食べ歩いてリサーチしました。コロナ禍だったので、テイクアウトを利用して会社に持ち帰り食べ比べすることも。
奥村さん
自社工場で打ちたての麺は、食べた瞬間口の中にふわっと広がる小麦の風味が魅力です。酒井さんには、製麺の現場に弟子入りしてもらって、麺づくりを勉強してもらいました。
酒井さん
そうですね。ノウハウがなかったので、文献を読んだり、実際に製麺の現場で学んだりして、粉の配合から生地をつくる温度、麺の長さ・太さ、ゆで時間、冷凍するまでの時間などを細かく調整しました。のど越しの良さと、コシのある食感を両立させるのがポイントでした。
奥村さん
冷やし中華の自家製麺のコシは、製造ラインでの急速凍結によるところが大きいです。
秋葉さん
ゆでたての麺を冷水でしめてすぐに急速凍結しているので、コシがしっかり残ったおいしい麺になりました。これは冷凍食品ならではのメリットだと思います。製造ラインでは、ゆでた直後から急速凍結までの時間の管理を徹底しています。
――麺づくりで苦労されていることはありますか?
今野さん
おいしい麺に仕上げるには、小麦粉とかんすい(中華麺に独特の食感や風味を生む成分)の温度管理がとても重要です。少しでも最適な温度からずれてしまうと、生地の状態が悪くなってしまいます。
北條さん
山形は果物がおいしいことで有名ですが、それは、それだけ一日の中で寒暖差がある土地ということなんです。
今野さん
季節によって室温や水温を、日々調整しながら作っています。
北條さん
今回山形工場では初めての麺ですが、なかなかおいしい麺に仕上がったと自負しています。打ちたて、ゆでたての麺が実現しました。
冷やし中華専門店の味を食卓で再現するために
――おいしい冷やし中華のお店を食べ歩いたとのことですが、麺以外のたれや具材もお店の味を参考に?
蟹沢さん
はい。食べて回った冷やし中華の専門店は、煮豚やチャーシューでこだわりを出しているな、と。そこを商品でも再現したかったんです。
酒井さん
自分たちで作って、そこからおいしさをさらに追求できないかということで、冷やし中華の具としては定番のハムではなく煮豚にしました。煮豚の出来にはとことんこだわりました。
蟹沢さん
甘じょっぱく煮た煮豚がアクセントになるような、専門店の味を目指しました。
酒井さん
また、冷やし中華の具材といえばきゅうりですが、いろいろなお店を食べて回ったときにオクラが入っているお店があって、これはありだ!と。麺、たれ、具材を合わせたときのバランスを見ながらブラッシュアップしていきました。
――トレーが2段に分かれていますが、なぜですか?
酒井さん
最後の盛り付けを意識しました。調理の最後にきれいに盛り付けられるように、麺と具材を別々にできる2段式を採用しました。
秋葉さん
トレーに入れるという製造ラインを作るのが初めてだったので、どこまで自動化できるかを考えながら、今後さまざまなメニューにも対応できるような柔軟性を持たせることにも苦労しました。
今野さん
細かいところでいうと、パッケージと中身の向きがそろっていないといけないので、それをコントロールするのは本当に難しかったですね。
2023年3月にリニューアルした『冷やし中華』。その内容とはいかに?
――2023年3月にリニューアルされたそうですが、大きく変わったポイントは?
蟹沢さん
まずは、具材がひとつ追加されました。最初に発売した冷やし中華は、具材を増やしてほしいというお客様の声を多くいただきました。そのため今回のリニューアルでは、錦糸卵、オクラ、煮豚、紅ショウガにかに風味かまぼこを加えました! より見た目が華やかで彩り豊かな『冷やし中華」』をお楽しみください。
蟹沢さん
次に、調理のしやすさも改良しました。氷の大きさや量を変更したり、麺の盛り付け方を見直すことで、加熱ムラがなくなり、麺がほぐれやすくなりました!
――では、最後に『冷やし中華』の推しポイントをお願いします!
奥村さん
ずばり氷の粒の大きさ! 温めた麺を冷ますときの氷のカラカラという音に清涼感が感じられます。
秋葉さん
氷とたれで冷やしきる冷やし中華には、ニチレイフーズならではの技術がぎゅっと詰まっています! ぜひご賞味ください。
酒井さん
きんきんに冷えた状態に仕上がるのがポイントです。改良に改良を重ねて完成した煮豚のおいしさも、ぜひ味わっていただきたいですね。
蟹沢さん
電子レンジで2分50秒(600Wの場合)温めるだけで、本格的な冷やし中華が完成します。その手軽さをぜひ体験してみてください!
今野さん
コシのある麺ですね。氷を混ぜて冷やすことで、さらに麺のコシが増して美味しくなります。
北條さん
美味しさをそのまま食卓にお届けできるように工程を工夫しているので、ぜひ召し上がっていただきたいですね。テレワークのお供にもぜひどうぞ。
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