今年も開催された、ニチレイ「特から®」の謎解きキャンペーン「特から®の謎を解くから」。今回は毎日更新される「今日のストーリーと謎」に加えて、超高難易度の謎解き「特から®史上最高難易度の謎」が出題されました。
特から®史上最高難易度の謎
https://nf-tokukara.jp/extreme/
見てわかる通り、これが尋常ではない難易度。一般人はもとより、普段から謎解きを楽しむ方でも尻込みするくらい強烈に難しい謎となっています。しかし、この超高難易度の謎をキャンペーン開始からものの数日で解き明かし、見事正解した猛者が現れました。その名は「らまぬじゃん」さん。謎解きを趣味にしつつ、自分でもネット上に謎を発表しているという人物です。
らまぬじゃんさんはこの超高難易度の謎を一体いかにして解き、どうやって正解に辿り着いたのか。そして正解者が語る、中央の謎のヒントとは?
今回「特から®史上最高難易度の謎」を作成した謎制作者の鯨井翔さんとともに、お話を聞いてみました。
【参加者プロフィール】
らまぬじゃん
「特から®の謎を解くから」史上最高難易度の謎を一人だけで解読した人物。弱冠20歳の学生ながら、謎解き歴は10年というベテラン。自身のWebサイト「らまぬじゃんのナゾなサイト」やX(Twitter)のアカウントでは、謎の出題者としても活動している
鯨井翔
「特から®の謎を解くから」史上最高難易度の謎の制作者。代表作の体験型謎解きゲーム「IMMORTAL」では、NAZO AWARDS 2021 EVENT部門でグランプリを獲得。現在はテレビ番組『佐藤健&千鳥ノブよ! この謎を解いてみろ! ―極悪カジノをぶっつぶせ―』での謎制作など、幅広く活躍している
「猛者が集団で襲い掛かっても、二週間は耐える謎」だったはずなんですが……
──今回は「特から®史上最高難易度の謎」を作った方と解いた方にお話を伺うわけですが、まず改めてこの謎は、一体どのように作られたんでしょうか?
鯨井さん
「最初の一週間くらいは誰も解けないくらいでいい」という依頼だったので、それならば「謎解き経験者がチームを作って挑んで、それでも解読には二週間くらいかかる程度」の難易度の謎を出してみようという企画でした。

今回のキャンペーンはシナリオとイラストをPEACH-PITさんが担当している。かわいい
──「集団で挑んでも難しい」というのが前提だったわけですね。らまぬじゃんさんは最初にこの謎を見た時、どのような印象を持ちましたか?
らまぬじゃんさん
最初は全く見当がつきませんでした。正直、「これ、本当に解けるのか?」と思ってましたね。高難易度系の謎解きにはヒントが出るのが前提の謎もあって、「理論上は解ける」くらいの難易度のものもあるので、ひょっとしたらそのパターンの可能性もあるんじゃないかと。
──それが解けてしまったという……。
らまぬじゃんさん
はい……。解けた時は達成感はあったんですが、同時に「やべえ、解けちゃった」と思いました。というのも公開されてから数日しか経っていなかったので「これは企画を潰してないか……?」「これ、送っていいのか?」という気持ちもありましたし……。
鯨井さん
出題者としては、悔しいといえば悔しいんですよね。本当に「慣れている人たちが集団で頑張っても、最初の正解者が出るまで14日間かかるくらいが理想」というオファーだったんで、ものの数日で解かれたというのは完全に僕の敗北というか。
閃きとプログラミングを総動員して、謎を解読
──具体的に、どのような手順で解いていったんでしょうか?
らまぬじゃんさん
ひとまず解けそうなところから解こうと思っていました。一問目は最初に解けたのですが、すごく迷走したんですよ。この文字列のフォントがいやらしくて、読み取ったアルファベットが正しいかどうかわかりづらい。ただ、一応一行目が「DPDCX」になっているのはわかったので、これについては、読める文字だけで解いてましたね。
らまぬじゃんさん
二問目については、とりあえず文字の数を数えるところから始めて、文字数も円周の◯と✕の数も22文字だと気が付きました。ここで一問目のリング状になったモールス信号がヒントになるんですが、このモールス信号は12時の方向から時計回りに読むことで「THREE」という手がかりが出るようになっていたんです。だから、周囲の○×もその順で読むんだろうと。

一問目。円の周囲にある黒い部分がモールス信号になっている。答え:GOD

二問目。らまぬじゃんさんは一問目の円周と同様に、◯と✕を12時の位置から時計回りに読む法則を発見した。答え:ROOT
──は〜、そうやって推理するわけですか……。
らまぬじゃんさん
そうやって○の位置の文字を拾って並べ替えると「WRONG」になりますが、これはおそらく正解ではない。(※1)WRONGという回答がダミーの可能性もあるけど、WRONGを使って解読できる暗号が正解の可能性もあるので、その二つの可能性を試すのは結構大変でした。結局二問目が解けたのは、一問目と三問目が解けた後でしたね。
(※1)「WRONG」は間違っているという意味の英単語。
謎解きでは誤った手順で導き出すと答えに「ちがう」「まちがい」などといった言葉が出てくることがある
──三問目はカラーコードを使った謎でしたが、こちらが二問目より先に解けたということは簡単な問題だったということでしょうか?
らまぬじゃんさん
普通に出題されたらめちゃくちゃ難しい問題だと思います。この問題を答えるには魔法陣の周囲に配置されているカラーコードが「#c0ffee」になっていることに気づく必要があります。偶然ですがこの色を別の謎解きで見たことがあったんですよ。だからまずそれがヒントだろうとわかったんですが、真ん中にある数列との関係がわからなかった。ただ、この数列を見てると、なんとなく二桁ずつに分けたくなるんですよね。

三問目。この色を見ただけで円周の色のカラーコードが「#c0ffee」であることに気がついた。答え:FACE
──何か怪しげに見えてきたわけですか。
らまぬじゃんさん
二桁ずつに分けた上で縦の並びを見ると、「23、15、19、12」とか「69、66、73、68」とかになって、なんとなく近い範囲の数字が並んでいる。これは何かあるなと思いました。

らまぬじゃんさんが解法をまとめていたスライドから抜粋。
らまぬじゃんさん
なんだか収まりがよくならないかな……と色々やっているうちに、「c0ffee」っていうカラーコードを10進数に直して、その数字をそれぞれの行から引いてみると、なんだかいい感じの数列が出てきて。元々一問目で「THREEだから三文字戻す」というのがあったので、「戻す」に対応した操作だと「引く」になるのかなと思ったんです。
鯨井さん
今回、正解の数列を暗号化するための手順を全て「足す」で統一しているんです。アルファベットだったら順番を前に進めているし、数字だったらプラスしてる。そこを統一することもヒントになったらいいなと思っていたので、読み取ってくれたのはすごく嬉しいですね。今まで聞いていた限りでは解き方も完璧に近いし、丁寧に作ったところを読み取ってくれているのはありがたいです。
──四問目はどうやって解いたんでしょうか。素人目にはマジで何にもわからないんですが……。

四問目。答え:ESCAPE
らまぬじゃんさん
色が虹の7色+黒色であることと、色の付いた丸の数から、各色が1〜7の数字に対応しているのはまずわかりました。ということは黒は0だろうと。ただ、この問題に取り掛かっていた時点ではまだ二問目が解けていなかったので、それをやりながらまずはパソコンでこの図を再現しようと思いまして、表計算ソフトを立ち上げて表をつくったんですよ。数字を入れ替えると色が変わるように設定して。

らまぬじゃんさんが解いている過程で制作していた図。数字を変えると色が変わる仕組みになっている
──すごい……。
らまぬじゃんさん
この表のマスの数も数えたんですが、縦33の横11なんですよ。ということは、横に三つ並べたら33×33で正方形になる。で、0から7の数字に色がついて並んでいるということは、2進数に置き換えたら000から111になることは推測できたんです。つまり、色がついた1マスが、2進数に置き換えれば3マス分に広がることになる。で、そう思うと、この図の左上や左下の部分がQRコードの角の部分っぽく見えてきたんですよね。
らまぬじゃんさん
この時点ではどう変換したらいいのかわからなかったんですが、QRコードから逆算して考えていくうちに「あ、これは表内の数字と円周の色を2進数に直したものとのXOR(※2)だ」と気がついて、それに気がついてからはひたすらマクロを組んで変換しました。あとは出てきたQRコードをスマホで読み込んだら、正解が出てきた……という感じです。
(※2)「XOR変換」
排他的論理和とも呼ばれる計算方法。2進数で、2つの数それぞれを桁ごとに見たとき同じ数が揃えば0、揃わなければ1にする計算のこと。例えば同じ数どうしでXOR変換をすると必ず0になる。

表にまとめると上記の写真のようになる

らまぬじゃんさんが解く際に整理していたXORの図
──正直、やってることのレベルが高すぎてついていけないですね……。
鯨井さん
……僕の想定では、この四問目がストッパーのはずだったんですよ。2進数に変換することに気がついても、そこから先の作業が結構しんどくて、ミスすると正解に辿り着けない。だから一人ではかなりきついだろうと思っていたんですが、まさかプログラミングで効率よく解かれるとは……。
──先ほどからお話を聞いていると、ちょいちょい閃きというか、「これじゃね?」と思考がジャンプする瞬間があるんですね。
らまぬじゃんさん
そうですね。自分でもどうやって閃いたか説明するのは難しいんですが……。全体戦の謎(大人数が協力して解くタイプの謎)だと、一人の思いつきから一気に謎が解けることもよくあるんですが、今回はチームで解くことを想定されているものを一人で解いている感じでした。
鯨井さん
まさにチーム戦を想定して作りましたからね。上級者が集まって「ああでもない、こうでもない」とやっているうちに閃きがポロッと生まれて解けるというのを想定していました。
中央の謎のヒントは、ズバリ「文字数」!
──で、ラスボスになっている中央の謎なんですが。
らまぬじゃんさん
ラストは全然サクッと解けたという感じではなかったですね。実は、僕はヒントにある「からあげ」の文字が消えているというところには気付かずに解いちゃったんですよ。
鯨井さん
え! どうやったんですか?
らまぬじゃんさん
これは出題者の想定とは違うんだろうなと思いつつ、試行錯誤だけで突破したんです。文字列に空白が開いているから……
(ここから具体的な解き方を教えていただいたんですが、ネタバレ防止のため割愛!)
らまぬじゃんさん
……という感じで推測して解答を作りました。もし答えが二択とか三択だったら、自信がなくて送れなかったと思います。
──は〜、なるほど……! ちなみにこの最終問題が解けるまでにかかった時間って、どれくらいだったんでしょうか?
らまぬじゃんさん
合計で6時間くらいでしたね。
──すごすぎる……。
鯨井さん
いや〜、あっぱれというか、脱帽ですね。最終問題はけっこう自信あったんです。投げっぱなしみたいな問題だし、文字の消え方とかに関してもいやらしい負荷をかけたつもりだったんですが……。
らまぬじゃんさん
謎全体に言えることなんですが、「解いてほしい」という出題者の気持ちは問題から感じられましたし、とにかく解けるようにはできている。決して理不尽な問題ではないと思いました。信頼できたのでスイスイ問題に取り組めたんです。
鯨井さん
ありがとうございます! こういう高難易度の謎を出す時に、「こんなもん解けるわけないだろう」って言われたり、本当は解ける実力がある人が「これは解けない」って諦められたりするのが嫌なんですよね。だから、僕は信頼度を大事にしたいと思っているんです。
──信頼度ですか。
鯨井さん
「この謎がこう解けたということは、次の謎はこの方向に頑張れば解けるんじゃないか」みたいな、作者の出題の方向性やヒントの正確さを信頼できる感覚ですね。これを失ってしまうと、「もう解けるわけないじゃん」ってなっちゃう。作者の問題の出し方が不親切だから解けないのか、それとも自分がわかってないから解けないのかが区別できなくなるんです。特にこういう高難易度の謎解きだとそうなりがちなので、そこは意識して信頼度を大切にしながら作りました。なので、そうやってこだわったポイントを、らまぬじゃんさんが丁寧に拾って解答してくれたのは嬉しいです。
──なるほど。推測を積み重ねていく作業を要求されるからこそ、積み重ね方が正しいかどうかの判断をするために出題者の誠実さが求められるわけですね……。キャンペーン期間も終了が近いんですが、中央の謎に取り組んでいる人に向けて何かヒントを出すなら、らまぬじゃんさんはどんなことを言いますか?
らまぬじゃんさん
とりあえず、まず問題の文字数には注目した方がいいと思います。そこがすごく重要なので、空白も含めてしっかりと数を数えた方がいい。
鯨井さん
文字数、すぐにわかりましたか? 結構いやらしい部分だと思うんですが。
らまぬじゃんさん
う〜ん、中央揃えで、なおかつ等幅フォント(※3)だな……とまず気づいたのでここはつまづかなかったですね。
鯨井さん
まずそこに気がつくとは……!
(※3)「等幅フォント」
すべての半角の文字が同じ幅になっているフォントのこと
──今の会話も、割と重要なヒントですね。
らまぬじゃんさん
あと、ヒントというよりアドバイスなんですが、こういうタイプの暗号解読って「やるのはタダ」というか、試みること自体は何のリスクもペナルティもなくできるので、思いついたらまずやってみることをおすすめしたいです。問題を信頼できないと解読のプロセスを試す気にすらならないということはよくありますが、今回の謎はちゃんと正解が確信できるように作られているので、とにかく試してみてほしいですね。「解読して出てきた文字列が正しいか、判断がつかない」ということにはならないよう、鯨井さんがちゃんと作った問題になっていると思うんです。決して理不尽ではないし、とにかく解けるようにはできているので、ぜひ諦めずに挑戦してほしいです。
──ありがとうございます。しかし、もし来年も最高難易度の謎解きをやるとなると、「らまぬじゃんさんがいる」という想定で作ることになるんですが、また引き受けてくださいますか、鯨井さん……。
鯨井さん
が、がんばります……!
おまけ
──謎解きやプログラミングには、いつ頃から興味を持って勉強していたんですか?
らまぬじゃんさん
小学生の頃からですね。もともと数学が好きだったので、趣味で学んでいました。
──小学生……?
キャンペーンは11月1日午前11時59分まで開催中です。
残り数日、「特から®史上最高難易度の謎」にぜひ挑戦してみてください!
特から®史上最高難易度の謎
https://nf-tokukara.jp/extreme/